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🔎なぜ犬たちは南極に―その

零䞋床にもなる南極に越冬し、キロ以䞊も移動する南極越冬隊。

移動手段ずしお圓初考えられおいた雪䞊車は、故障するおそれがある。遠く離れた堎所で故障したらどうなりたすか修理道具も亀換郚品もない。そしお修理䜜業をする人もいない。぀たり基地に戻れなくなる。隊員たちの呜が危険にさらされるわけです。 その危険性を回避するために、急遜、北海道に生息するカラフト犬を倧量に南極に連れおいき、雪䞊車ず䜵甚しお、犬ぞりで探査するこずが決たりたした。

さあ、次にやるこずは぀です。

第に、本圓にカラフト犬が南極で犬ぞりを匕くこずができるのか、ずいう胜力の刀定。

第に、カラフト犬はいったいどこにいるのか、ずいう特定䜜業。

第に、その犬たちには飌い䞻がいるわけですから、どう説埗しお譲り受けるのか。それをだれがやるのかずいう確保の問題。

第に、犬だけ集めおもどうしようもない。犬たちをコントロヌルしお犬ぞりを走らせるこずができる人材の育成。

どれも簡単ではありたせん。東京の官僚たちは頭を抱えたした。

「北海道っお、広いぞ」「䞀軒䞀軒探し回っお『おたくにカラフト犬はいたせんか。いたらお囜のために譲っおください』なんお、できないしなあ」

たず、第の問題をクリアしなければ話になりたせん。蚀い出しっぺの西堀栄䞉郎氏は北海道倧孊の加玍䞀郎氏を尋ねたした。理由がありたした。西堀氏は京郜倧孊山岳郚ですから極地極端に寒かったり暑かったりする地域に詳しい。そしお加玍氏はもずもず京郜育ちで、北倧蟲孊郚に進み、極地研究の第䞀人者であるこずを知っおいたからです。しかも加玍氏はかねおから「極地の移動は犬ぞりが有甚である」ず䞻匵しおいたした。

「加玍氏なら、極地育ちのカラフト犬にも詳しいだろう」ずいう読みがあったのです。その読みは圓たりたした。

西堀氏の蚪問に、加玍氏は「カラフト犬のこずなら、北倧の犬飌哲倫教授の右に出る孊者はいない。圌を蚪ねなさい」ず玹介しおくれたした。幎月。西堀氏は犬飌教授に事情を説明。犬飌教授は快諟し、さたざたな情報を䞎えおくれたした。

「日本が暺倪を領有しおいた時代がありたした。そのころ、倧量にカラフト犬が北海道に枡っおきたした。したがっお、珟圚でも、北海道各地にカラフト犬は存圚したす」ずいう説明に、西堀氏は安堵したした。

知りたいのは点。第に、カラフト犬は南極の寒さに本圓に耐えられるか。第に、犬ぞりを匕くだけのパワヌがあるか。荷物を詰めば䜕癟キロの重さになるからです。第に、カラフト犬で線成した犬ぞりを越冬隊員で操るこずができるか。

このどれが欠けおも、犬ぞり隊は絵に描いた逅になりたす。

たず、寒さに耐えられるか。犬飌教授はこう説明したした。

「カラフト犬ずいっおも、倧きく分けお皮類ある。毛が長い長毛皮ず、毛が短い短毛皮。長い毛のほうが寒さに匷いずいえるが、短毛皮でも十分南極の寒さには耐えられる」ず倪錓刀。第の条件はクリア

次はカラフト犬のパワヌです。犬飌教授は、以前、暺倪でカラフト犬たちのけん匕力を調べたこずがありたした。四肢が倪く重心が䜎いので、゜リを匕くこずには適しおいる。特にオスのほうがパワヌがある。

「おおよそですが、䜓重の半分の重さが目安ですね」

぀たり、䜓重キロのカラフト犬頭でキロの荷物を運べる。頭線成ならば、キロの荷物が運べる蚈算になる。西堀氏は驚きたした。

「キロか  これは、いけるぞ」

第の条件もクリア残るは、犬ぞり隊を玠人の越冬隊員がコントロヌルできるか、である。

犬飌教授は気の毒そうな衚情で蚀いたした。

「越冬隊員は、科孊者や技術者の方ばかりなんでしょう犬ぞりを操った経隓がないのであれば、無理です」

西堀さんは、膝から厩れ萜ちそうになりながらも、食い䞋がりたす。

「でも先生。北海道で犬たちを調教しお、犬ぞりを走らせる蚓緎をすれば、なんずかなるのでは 」

「いやあ。簡単に蚀いたすが、カラフト犬は賢いですよ。人間の思惑など芋抜きたす。ほずんどのカラフト犬は、北海道内の家で䜿圹犬ずしお飌われおいたす。その飌い䞻、家族にはものすごく埓順です。絶察に逆らわない。しかし、それ以倖の人間の蚀うこずなど、聞きたせん。たあ、生たれたばかりの子犬を集めお、育おながら蚓緎するなら可胜ですが」

「いや、それでは、ずおも越冬隊の出発には間に合いたせん。成犬を集めお蚓緎するしか、ないんです」。西堀さんも必死です。

犬飌教授は、同情しながら、こう蚀いたした。

「やれるだけ、やるしかない。ただ、心配なこずが぀ありたす。優秀なカラフト犬を北海道䞭から集めたずしおも、それぞれの犬は、『俺が、俺が』の犬ばかり。唯我独尊の集団ずもいえる。すべおの犬が心を䞀぀にしお犬ぞりを匕くようになるには、しっかり順䜍付けをしなければなりたせん」

順䜍付けずは䜕か。それは、実際に蚓緎が始たっお、知るこずになりたす。

「もう䞀぀。必ず、優れた方向感芚ず危険察知胜力を備え、リヌダヌシップがある犬が必芁です」ず犬飌教授。

そういわれおも、西堀さんには意味が分からない。カラフト犬は、どれも方向感芚に優れおいるし、危機察知胜力もあるず聞いおいたからでした。芋透かしたように、犬飌教授は続けたす。

「もちろん、優れたカラフト犬は、鋭敏な方向感芚も危機察知胜力もある。私が蚀いたいのは、そういうレベルをはるかに超える、スヌパヌドッグが絶察に必芁だ、ずいうこずなんです」

「それは、なぜですか」ず、西堀さん。

「犬ぞり隊の先頭を走らせるためです。先頭を走る犬を先導犬ず蚀いたす。先導犬は、どの犬でもできるわけじゃない。数十頭、数癟頭に頭いるかいないか。優れた先導犬がいれば、犬ぞりはリズミカルに、スムヌスに、スピヌド豊かに走る。そうでない犬が先導犬の圹割を担うず、犬ぞりはあっちに行ったりこっちに行ったり。ぬかるみにはたったり、そのうち犬同士でけんかを始めたりしたす」

そういっお、犬飌教授は西堀さんの目をたっすぐ芋お断蚀したした。 「ですから、絶察に先導犬ずしおの才胜がある犬を芋぀けるこず。それができなかったら、頭連れお行っおも、うたくいきたせん。しかし、私は信じおいたす。この北海道には、きっず、そんな才胜のあるカラフト犬がいたす。頑匵っおください」

励たされたのか、絶望の淵に突き萜ずされたのか。刀然ずしないたた、西堀さんは北海道倧孊を埌にしたした。垰り際にかけられた蚀葉が、重くのしかかりたした。

「西堀さん。カラフト犬は銬鹿じゃないですよ。人間など及ばない才胜があるし、人間を芋抜く。『こい぀はダメな奎だ』ず烙印を抌された隊員では、犬ぞりはコントロヌルできたせん」

これは倧きな問題でした。いくら犬を集めおも、制埡できないのであれば、アクセルずブレヌキが壊れた車を運転するようなものだからです。

「優秀なカラフト犬を集めるのも倧事だが、犬の信頌を埗られる人物を隊員に遞ぶ。ここがポむントなんだな」

こうしお、たず、犬探しが始たりたした。広倧な北海道。そのどこに、カラフト犬はいるのか。思いがけず、協力者が珟れたした。北海道庁衛生郚です。道内にある保健所を通しお、狂犬病予防法に基づく畜犬登録原簿を調査。今のマむナンバヌカヌドのようなものでしょうか。この結果、優秀な血を匕いおいるず思われるカラフト犬は、北海道に玄頭いるこずがわかりたした。

しかし血統だけでは䞍十分です。競銬も血統ず蚀われたすが、血統がよい銬が必ず勝぀わけではない。カラフト犬も、本圓に優秀か、人間にどれほど埓順か、犬ぞり隊の䞀員ずしおやっおいけそうな性栌か。それは実際に芋おみないずわからない。しかも、優秀であればあるほど、䜿圹犬ずしお有甚なわけですから、飌い䞻が容易に手攟さないだろう。メンタル面もある。倧人は䜿圹犬ずしお割り切っおいたずしおも、子䟛たちにずっおは、犬は兄匟みたいなものです。無理やり匕き離すこずなどできたせん。

映画「南極物語」で、䌌たようなシヌンがあったのを芚えおいる方も倚いでしょう。

この倧倉な圹目を匕き受けたのが、犬飌教授ず、その教え子たちでした。北海道䞭を回り、「これは」ずいう胜力の高いカラフト犬を譲り受けお行ったのです。

それは、぀らい䜜業だったようです。

「この犬を囜に持っおいかれたら、俺たちはどうやっお生掻したらいいのか」ずいう経枈面での理由なら、なんずかなりたす。しかし「よりにもよっお、南極みたいな地の果おに、うちの犬を連れおいくなんお、ずんでもない」「うちの犬は、子䟛たちず同じ家族。垰っおくれ」ずけんもほろろの状態が続きたした。やっず承諟しおもらい、カラフト犬を連れお行こうずしたら、その家の子䟛たちが泣きながら「連れお行かないで」ずすがり぀くので、孊生たちの心は痛んだそうです。

1956幎3月30日。北海道の最北端にある皚内垂。その郊倖にある皚内公園に、䞀぀の看板が立おられたした。 「南極孊術探怜隊 暺倪犬蚓緎所」

ここに、北海道䞭から遞抜されたカラフト犬、38頭が集められたした。ここが、犬ぞり蚓緎地になったのです。

理由がありたした。北海道最北端なので圓然寒い。それだけでなく、1幎間に80日は颚速10メヌトル以䞊の匷颚が吹き荒れる。北に宗谷海峡、東にオホヌツク海、西に日本海ず、䞉方が海なので颚が匷いわけです。しかも皚内公園は皚内垂の高台にあるので、さらに颚が匷い。マむナス50床、颚速50メヌトルの匷颚になるこずもある南極を想定した蚓緎所ずしおは、ここがベストだったわけです。

犬たちが暮らす飌育所1089平方メヌトルず、犬たちを䞖話し、犬ぞりの蚓緎をする北海道倧孊の孊生たちが寝泊りする管理所45平方メヌトルが隣接し、その呚りは、板塀ず金網で厳重に囲たれたした。他の動物の䟵入などを防ぎ、犬たちを守るためです。

犬たちは飌育所に、それぞれ自分が䌑むスペヌスが割り圓おられたした。ずいっおも、私たちが普通むメヌゞする犬小屋のようなものではありたせん。ただの板切れを斜めに蚭眮した簡玠なもので、せいぜい日よけぐらいにしかなりたせんが、匷靭な䜓力を持぀カラフト犬なら、それで十分だったのです。ここを根城に、近くに蚭けられたトレヌニング゚リアで、重たい荷物を積んだ犬ぞりを、10数頭の犬たちが力を合わせお匕っ匵る。来る日も、来る日もこの蚓緎の繰り返しです。

この時は、ただ第1次南極芳枬隊のメンバヌは決たっおいなかったので、蚓緎にあたったのは北倧の孊生たち。いずれも山岳郚や極地探怜の経隓が豊富で、心の䞭で「俺も芳枬隊のメンバヌに遞ばれお、南極で越冬するんだ」ず誓っおいる孊生もいたのです。

このころ、「日本も、先進囜ず䞊んで、南極で越冬芳枬事業に参加するらしいぞ」「ずいうこずは、日本も先進囜の仲間入りをするっおこずだな」。そういう期埅が高たり、囜民的な関心を集めるようになっおいたした。

ですから、蚓緎地に遞ばれた皚内垂民の喜びようは倧倉なものがありたした。垂圹所も党面協力で、職員を掟遣。さたざたな文曞手続きなどをこなしたした。垂民たちも、犬たちに向かっお「日本の誇り、皚内の誇りだ。南極でしっかり頑匵っおくれよ」ず塀の倖偎から声をかけたり、差し入れも盞次ぎたした。カラフト犬たちは「ニッポン」を背負っお、倧いに期埅されおいたのです。

しかし蚓緎が進むに぀れお、どうしおも解決できない課題が深刻化しおきたした。犬がけんかばかりするのです。犬たちは、それたで、それぞれの家庭で飌われおいたした。それが、突然家族から匕き離され、運ばれた先には、芋知らぬ犬たちず、芋知らぬ人間しかないのです。譊戒し、攻撃的になるのは圓たり前でした。逌をやるずきの倧隒ぎは収拟が぀かないほど。蚓緎も、倧した効果が出たせん。

「このたたじゃ、南極に連れお行っおも、䜕の圹にも立たないぞ」。北倧生らの衚情には、日に日に焊りの色がにじみたした。

そんな時、䞀人の男が蚓緎所にやっおきたした。埌藀盎倪郎。暺倪で長く暮らし、カラフト犬の蚓緎にも十分なキャリアず実瞟がある男です。いわば犬ぞり隊の成吊を握るキヌマンです。

埌藀氏は、すべおの犬を1é ­1頭䞹念に調べ、資料を調べ、関係者を集めお蚀いたした。

「ここにいるカラフト犬たちの基瀎胜力は高い。南極でも十分働ける」

――おおっ

呚りから歓声が沞きたした。しかし、埌藀氏の次の蚀葉で肩を萜ずしたす。

「それぞれは優秀。しかし、珟状を芋るず、ばらばらだ。統䞀した動きができない。これでは犬ぞりは匕けない」

倩囜から地獄ぞ。孊生が愚痎をこがしたす。

「ずにかく、僕たちの蚀うこずを党然聞かないんですよ」

埌藀氏はすかさず蚀い切りたした。

「無理もないが、それは、君たちが悪い。決定的に欠けおいるこずが぀ある。犬たちの序列ができおいない。だから犬たちは混乱しおいる。もう䞀぀、君たちは犬たちに信頌されおいない。これではだめ」

「じゃあ、どうすればいいんですか」

「たず、序列をきちんず組む。どの犬が1番で、どの犬が最䞋䜍なのか。それを決める」

「いったい、どうやっお」

「1察1の喧嘩をさせるんですよ。匷い犬が䞊。匱い犬は䞋。はっきりさせおやるこずで、犬たちは䞍安から解攟されるんです」

ずはいえ、それは正芖するのが぀らいほどでした。いかにも仲の悪そうな犬同士を戊わせる。錻にしわを寄せ、牙をむき出し、吠え掛かり、襲い掛かる。耳にかみ぀き、錻を襲う。䞀瞬でけりが぀くこずが倚かったが、実力䌯仲の堎合は長匕く。血を流しあいながらかみ぀いた状態が続く。するず、埌藀さんは棍棒を持っおきお、いきなり、2頭を殎り぀けたした。

「なにをするんですか」孊生たちは圓然怒りたす。しかし、埌藀さんはこう蚀いたした。

「犬たちのためなんです。攟っおおけば、どちらかが死ぬたで戊う。カラフト犬は呜を捚おおでもプラむドを守るから」

今ならずおも蚱されない方法です。しかしその効果は抜矀でした。あれほどばらばらで、喧嘩ばかりしおいた犬たちが、しっかりたずたり、喧嘩も途絶えたのです。

「犬だっお、無駄な争いはしたくない。こい぀らは、あなたたちが思っおいるよりも、はるかに賢いんですよ。あずは、あなたたちが、犬たちから信頌を埗るこずですよ」

そう蚀われお、孊生たちは奮い立ちたした。

「ようし、俺が䞀番先に、犬たちの信頌を埗るんだ」「いや、俺だ」

こうしお、犬ぞり蚓緎は埐々に成果を䞊げおいきたした。

蚓緎コヌスは、皚内公園の裏山呚蟺を含む1å‘š4キロたたは6キロコヌス。初めのころは蛇行したり、荷物を萜ずしたり、散々でしたが、埐々に人間が指瀺するずおりに走り、曲がり、止たるように。さらに、積茉重量も100キロから200キロ、300キロず、どんどん重くなっおいくのですが、犬たちは平気で匕くようになっおいきたした。

蚓緎所開蚭圓初は、犬を怖がったり、銬鹿にしおいた孊生たちの心に、倧きな倉化が生たれたした。

「犬っお、すごい。こい぀ら、本圓にすごいな」

孊生たちの心境の倉化を、犬たちは敏感に感じ取りたす。人間に察する信頌も、埐々に深たっおいったのです。

そんなある日、北海道倧孊の芳賀良䞀助手が3頭の子犬を連れおきたした。ただ生埌数か月。

「可愛いけど、これは、いくらなんでも、蚓緎は無理ですよね」ず孊生たち。

しかし、埌藀盎倪郎氏は、この子犬たちを真剣に調べたした。そしお蚀ったのです。

「この子ず、この子。この2頭は、すばらしいカラフト犬だ。必ず戊力になる。すぐに蚓緎するのは無理だが、南極に連れお行ったほうがいい」

その2頭の子犬は、タロずゞロず名付けられおいたした。

もう1頭の兄匟は、サブロずいう名前でしたが、残念ながら蚓緎からは倖されたした。

1956幎10月。蚓緎が完了し、犬ぞり隊甚のオス犬20頭が遞ばれたした。その䞭には、タロ、ゞロもいたした。埌藀氏の読みが圓たったのです。

さらに、南極で子䟛を産たせる目的で、メス犬も2頭。合蚈22頭が第1次南極芳枬隊ずずもに、南極を目指したす。

ただ、懞念材料もありたした。北海道倧孊獣医孊郚の調査で、犬たちの倚くが心臓機胜に問題があったからです。このため北海道倧孊は「越冬隊のメンバヌの䞭に、獣医を入れるべきだ」ず勧告したした。犬たちは長距離を移動しお様々な芳枬をするのに欠かせない存圚。重芁な戊力です。その健康管理は重芁な問題であり、獣医は必須、ず䞻匵したのです。しかし、芁員には限りがある。獣医の掟遣は芋送られたした。

そしお、獣医䞍圚の越冬ずいうこずが、倚くの悲劇を生むこずになるのです。

1956幎11月8日。南極芳枬隊ず犬たちを乗せた、南極芳枬船「宗谷」は、東京・晎海ふ頭を堂々ず出枯しおいきたした。埠頭は、人であふれかえっおいたした。それほど、南極隊に察する日本人の期埅は倧きかったのです。

芳枬隊のメンバヌの䞀人に、北村泰䞀隊員がいたした。京郜倧孊の倧孊院生。超高局地球物理孊専攻ですが、若いので犬係を兌務するこずに。圌も皚内で犬ぞりの操瞊蚓緎に汗を流したのです。

北村氏は「犬たちは元気にしおいるかな」ず船倉を降りお、犬たちが起居する郚屋の前に来たした。するずドアにこう曞いおありたす。

「ワン君、ガンバレ。君たちの手柄を埅っおいる。みんな元気で、必ず無事に日本に戻っおくるのだぞ」

癜墚で曞かれた倧きな文字。北村さんは、誰が曞いたのか、想像が぀きたした。

南極芳枬にカラフト犬を掟遣するこずが発衚されお以来、党囜の愛犬家たちは、犬たちのこずを䞍安に思い始めたした。未知の倧陞、極寒の地、南極。そんなずころに、なぜ犬を連れおいくのか。

以前、このコラムに曞いた氏の事件。南極から匕き揚げる時、倚くの犬を眮き去りにした衝撃的な事件は、圓時の日本人の心に、倧きなショックずしお残っおいたのです。

「たた、犬たちを眮き去りにするんだろう」「かわいそうじゃないの」

そういう声が倧きなうねりずなり、やがお反察運動ずなっお「暺倪犬を芋守る䌚」が結成されたした。運動の䞭心になったのは、埌玉県圚䜏の女性でした。この女性は出航前に宗谷に招かれたメンバヌの䞀人でした。

「どうか、無事に垰っおきおね」。

――そういう思いで、圌女はこの文章を曞いたんだな。絶察に連れお垰りたすよ。

北村さんは、あらためお誓いたした。

倚くの日本人は、南極芳枬成功が、日本の地䜍向䞊に぀ながるず信じ、「敗戊囜」から「経枈倧囜」ぞの道を歩み始めた囜力を芋せ぀ける奜機ず感じおいたした。しかし、片方で、犬たちを案じる日本人も倚かったのです。二぀の気持ちに揺られるように、南極芳枬船「宗谷」は、東京湟を出るず、右に巊に、軜くロヌリングしながら、䞀路南極を目指したす。

次回は、南極到達ず、意倖な珟実に盎面した日本隊、犬たちの初陣に぀いおご玹介したす。

written by Free Dog

䞍定期掲茉

【ミニ解説】 日本の第1次南極越冬隊は倚くの犬を南極に連れお行った。しかし1幎埌、2次越冬隊ずの亀代に倱敗。結局15頭を鎖に぀ないだたた南極に眮き去りにした。党滅したず思われおいたが、1幎埌、なぜかタロずゞロの2頭は生きおいた。䞖界䞭が驚き、「タロゞロの奇跡」ず蚀われおいる。

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